現実療法(Reality Therapy)
精神科医ウイリアム・グラッサー(William Glasser. 1925~2013)によって提唱されたカウンセリング手法。
1965年に『現実療法』(Reality Therapy)が出版されて一躍注目されるようになった。これまでの過去、感情、症状に焦点を当てる方法とは異なり、現在の満たされていない重要な人間関係にいち早く焦点を当てることによって、問題解決を試みるカウンセリング手法である。
ことさら洞察を目指すものではないので、小さな子どもからどんなレベルの人にも関われる手法である。対象年齢を問わず、犯罪矯正、薬物依存、精神病、親子・夫婦の家族関係、スクール・カウンセリング、職場のマネジメントと適用範囲は広範囲である。
グラッサーは、1970年代にはカウンセリングにステップを使っていたが、後に「コントロール理論」を現実療法の基本的理論とするようになり、1996年にコントロール理論を「選択理論」に改名した。
1996年以降の著作では、グラッサーの考え方に大きな違いが見られるようになった。
最近のグラッサーは、「すべての不幸な人が抱えている中心問題は、(貧困不治の病、政治的横暴などを除けば)お互いが望んでいるのに、互いにうまく関わっていけないこと」であると主張する。 カウンセラーが焦点を合わせる中心問題には二つある。
一つはカウンセラーとクライエントとの関係である。良い関係が築かれなければ、問題解決の過程は進展しない。
二つ目は、クライエントの不満足な人間関係、あるいは満足した人間関係の欠落である。
グラッサーは「人間にとって唯一の問題 は不幸であること」とする。人が不幸なときには、とてつもなく創造的になり、その結果非行、犯罪、薬物依存、暴力、精神病と呼ばれるような行動をとるようになる。
現実療法のカウンセリングには3つの前提がある。
外的コントロール心理学の表れ方は、致命的な7つの習慣となる。
この習慣が実践されるところでは、基本的欲求が充足されず、問題が発生する。
グラッサーのアイディアを教育界で使ってグラッサー・クオリティ・スクールがいくつも誕生している。実践校では7つの習慣は実践されず、教師と生徒との関係は対立構図ではない。外的コントロールを使わない、温かい人間関係のなかで、クライエントは問題解決をし、生徒は勉学に取り組んでいると報告されている。(柿谷正期)
グラッサー. W. (柿谷正期訳) 2000 グラッ サー博士の選択理論 アチーブメント出版
グラッサー.W. (柿谷正期・柿谷寿美江訳) 2000 15人が選んだ幸せの道 アチーブメント出版
『現代カウンセリング事典』(国分康孝編、金子書房、2001年12月)より